日本画を描くには、岩(いわ)絵の具・水干(すいひ)絵の具や、胡粉(ごふん)などを使いますが、それだけでは、紙などに接着しませんので、
膠(にかわ)を溶いて混ぜ、紙面などに定着させる必要があります。
今回は、その膠の種類や使用方法、そして、最も簡単だと思う膠水の作り方について書いていきます。
1 膠(にかわ)の種類
膠(にかわ)は、動物性タンパク質です。
高タンパク、コラーゲン。
牛、鹿、ウサギなどの皮や骨などを煮詰めて、固形にしたとのことです。
古代から、世界的にも接着剤として使われていたようです。
状態として、固形になっているのは、棒状、粒、キューブ状になっています。
膠液(にかわえき)として、液体の商品もあります。
三千本膠(さんぜんぼんにかわ)は、牛皮が原料とか。
棒状で何本かまとめて売られています。
(30cmくらいで、一本100円前後?)
粒膠(つぶにかわ)は、粒状に固めたもので、袋入りですね。
鹿膠(しかにかわ)は、キューブで箱詰めされた商品があります。
(これには防腐剤が入っているので、腐りにくいです)
ウサギ膠という、細かな粒子のモノもありますね。
2 簡単な、膠水(にかわみず)の作り方
膠液(にかわえき)ともいいます。
液状のモノを、単に「ニカワ」と呼ぶことが多いです。
固形になっているモノは、お湯で溶かさないと使えません。
三千本膠は、溶く容器に入る(水に浸る)大きさにカットしなくてはいけません。
とても固いので、ペンチで力をこめて切ります。
でも、切れ端が飛んで行くので、危ない上に、破片が散乱したりします。
必ず、タオルなどで膠とペンチを巻いてカットしましょう。
でも、粒膠や鹿膠を使えば、ペンチもタオルも必要ないですよね。
粘性や接着面で若干の違いはありますが、用途に大きな違いはないので、
初心者には、粒膠などで全くOKです。
一日、水につけておく方もいますが、ふやかさなくても大丈夫です。
ねじ式の小瓶(びん)にお湯と膠を入れて、その瓶を湯煎(ゆせん)します。
膠と水分量ですが、重さで、膠が一割なら10パーセント。
私は、それよりもう少し濃くしています。
まあ、10パーセントで大丈夫です。
私は、50ccぐらいのねじの蓋(ふた)付きの瓶(びん)を使います。
その瓶を湯煎するのですが、お湯の入ったコップにつけておけばOKです。
お湯が冷めたら、瓶を取り出して、コップのお湯の方をレンチンします。
2~3回、繰り返し。
慣れてくれば、膠のビン(ふたを外して※)ごとレンチンしてもいいですが、
弱モードで5秒ごとぐらいで、確認(目視)しながらしてください。
くれぐれも、膠を直接、温めすぎないように!
粘性のある液体なので、突如沸騰して、レンジの内側に飛び散って大変なことになります。
※電子レンジに金属は入れないこと!
(金属はマイクロ波を反射し、火花が飛んで、火災の原因にもなります!)
瓶に蓋(ふた)をしたままにして、時々、手で振りします(やけど注意)。
瓶の裏を見て、塊がなくなっていれば、完全に溶けたことになります。
匙(さじ)も土瓶(どびん)もコンロも、前日からの準備も要らない、簡単な膠水の作り方でした。
3 膠水の保存
腐りやすい膠なので、少量ずつ小瓶で作ると良いですね。
小瓶は冷蔵庫で保管しやすく、教室への運搬も楽ですよ。
濃度調整もしやすいと思います。
腐りやすいので、使わないときはとにかく冷蔵庫保存で。
使うときには、コップの湯煎で戻して。
横着な私は、また、弱目モードでレンチン5秒で。
制作中は、腐らないように膠のビンを水のコップに浸けておきます。
冷蔵庫に入れても固まらなくなったら、腐った証拠。
くさいくさいです。
4 膠水の用途
接着剤なので、いろいろなものを接着したり、固形化したりできますが、
日本画では、主に使われるのは、
胡粉(ごふん)をこねて、団子にしたりするとき
水干(すいひ)絵の具や、岩絵の具を溶く際
銀箔や金箔などの箔を紙面などに貼る際(金粉などを撒く際も)
用途によって、また、使う場面よって、膠水の濃度を濃淡させる調整が必要です。
10パーセントとか自分の作った濃度から、水を足して調整しましょう。
ちなみに、絵の上層部ほど薄い方がいいです。
基礎部分で、絵具が動かない(剥離しない)ようしにて、上層部は絵具の発色を活かすためですね。
箔は、3パーセントくらいの捨て膠(いったん接着面に膠を刷毛で塗る)した上で、
乾いてから、箔を置く前に、更に1.5パーセントの膠を画面に塗ります。
金粉など(砂子)を画面に撒(ま)く際にも、1.5パーセントぐらいです。
また、絵具を溶くときに、最初に出会う液が膠液の方がいいと言われています。
水に溶いてから膠液を混ぜるというのは、絵具の周りに水分の膜を作ってしまうのか?よろしくないようです。
絵具にある岩絵の具の水分が飛んで乾いた際に、水を足して溶くと、追加しすぎて膠の濃度が下がることがあります。
効いていないと、乾いてから、絵具が落ちてしまいます(手で触ると取れます)。
一方、濃すぎる膠水を使うと、乾いた際、黒くテカったり(膠焼け)、画面が割れたりしますので、注意してください。
5 膠抜きとは?
膠で溶かれた岩絵の具が、余ってしまい保存するとき、そのまま乾燥させても特に固体化されて腐るものではないのです。
が、絵皿に張り付けたままというのも、、、
膠抜きをすれば、袋などに入れておけます。
絵具が入った皿にお湯をこぼれないくらい入れて、絵具を溶きます。
溶いてしばらく放置し、絵具が沈殿したら、上水を流して捨てます。
これを2~3回して、後は、乾燥させれば、膠の成分が抜けてますので、別途保存できます。
新品の絵具とは、分けて保存しましょう。
描いてる際に、他の絵具が混じりますよ。
6 まとめ
膠の溶き方や使い方は、作家さんによって違いますが、もっとも基本的なことをまとめました。
手軽に膠を使うには、液状のものを買うのがいいのですが、それだと膠抜きしにくいらしいので、
取り敢えず、「粒膠を湯煎」が一番簡単かなというのが、まとめです(^^♪。
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