金箔の輝かしさに魅力を感じる方も多いと思います。今回は金箔以外にもいろいろある箔の種類や、表現の方法のいろいろ、箔の使い方の基本について説明します。
1 箔の種類
金属をとってもとっても薄く伸ばした状態のものを箔(はく)と言います。
金箔以外にも、銀箔、銅箔、プラチナ箔、真鍮(しんちゅう)箔(洋金(ようきん)箔、ブラス=銅と亜鉛の合金)などいろいろあります。
一番、生活面でも一般的なのは、アルミ箔ですね(これも使いようです)。
さらに、それぞれの配合率によっても種類があります。
一般的日本画で使われる金箔は「四号色」と言うものです。
厚さによっても種類があります。(厚箔とか)
純銀箔を燻した赤貝箔(あかがいはく)、青貝箔(あおがい)、黒箔という箔もあります。
大きさも、三寸六分(約10.9㎝四方)や、四寸二分(約12.7㎝四方)などがあります。
箔と箔の間に挟まれた紙を、箔ごと切ってサイズ化しているのを「断切(たちきり)」と言います。
間の紙が箔より大きな場合は「縁付(ふちつき)」と書かれています。
縁付きの方が、あかし(間の紙からはがし)やすいかもしれません。
2 箔の絵画表現方法のいろいろ
現在の日本画においても、いろいろな箔を貼り付ける(箔押し)表現がなされています。
伝統的な、胡粉(ごふん)で盛り上げた上に、箔を押して立体的に表現することもできます。
また、背景として平面的に押したりします。
その下に、凹凸のマチエールが施されていると、表情が付きます。
岩絵の具等の上に箔押しをし、更に、乾いてからあえて箔を、スポンジなどで一部を剥がし、残った箔と見えてきた岩絵の具との表現も工夫できます。
箔を、硫黄で焼く、箔焼き(はくやき)という方法もあります。
箔を細くした砂子(すなご)を、絵の画面にふりかけて、接着する方法もあります。
伝統的な絵画で、銀箔を背景に敷き詰める表現は、病気を遠ざける願い(衛生)も込められている場合もあるそうです。
現代日本では、工芸作品との分類を気にされる場合があるようですが、artとは、そもそも「技」の意味でもあり、考えすぎて視野を狭くしたくないなと、私は考えています。
3 箔押しの基本方法
風で飛んでいきやすい箔、風のないところで作業しましょう。
エアコンなどの風が当たらないように。
手指や道具(箔ばさみ)を、シッカロール(ベビーパウダー)をまぶして、箔が付かないようにしましょう。
作業用の机上にも、新聞紙などを敷いておきましょう。
箔押しで必要な道具
箔、あかし紙(画材店で100枚単位で売られている)、膠(にかわ)水、箔ばさみ、シッカロール、はさみ、新聞紙、
まず、箔と箔の間に挟んである紙の端を、箔ばさみの長い部分の角で軽くなぞると、紙の端が少し上向きにそるので、箔ばさみで、そっとはぎとります。
箔の上に、あかし紙をそっと置きます。あかし紙の上を、箔ばさみで優しくなでつけます。
そのあかし紙を、箔ばさみでつまんで、そっと持ち上げると、箔も一緒についてきます。
あかし紙の180度反対側の端を指でつまめば、操作が楽です。
これで、あかしたことになります。(注意:画面に貼る直前にします。長くあかし紙に貼り付けておくと、あかし紙に接着してしまうので)
次は、箔押し(貼り付け)です。
箔を貼りたい画面に、捨て膠(すてにかわ)をします。(あかす前にしておきましょう)
絵で使う2~3倍程度の薄い膠水を、貼る部分に塗って、乾かします。
乾いたら、今度は、更に薄い膠水(捨て膠水を水で倍に薄める)を、もう一度、貼りたい部分に塗り、今度は乾かないうちに、箔を載せます。
(箔が下=画面につく方、あかし紙が上になるように)
あかし紙の上から、そっと押さえつけて、箔と画面に隙間がないようにします。
慌てずゆっくり、あかし紙を取り除けば、OKです。
箔ばさみで、あかし紙をはがしますが、貼る部分が小さいとうまくいかないことが多いかもしれません。
私の場合は、メンディングテープをちょっとあかし紙の上につけて、ゆっくりはがすようにしています。
貼る部分が三寸六分とは限らないので、あかし紙ごと、少し大きめに、形も考えて、はさみで切って使うことが多いです。
はさみには、シッカロールをまぶしておきましょう。
貼る部分が大きい場合は、少し重ねます。
貼りたい部分からはみ出して貼ってしまった場合、乾いてからはみ出し部分の上に岩絵の具を塗れば大丈夫ですヨ。
4 砂子や金泥について
砂子を撒(ま)く場合は、絵の画面に、箔押しと同じ程度の薄さの捨膠を刷毛でしておきます。
更に薄い膠水を塗って、乾かないうちに、砂子筒(すなごづつ)に箔を入れ、筆(砂子用のものも売られていますが古い物をよく洗って乾かしたものでも大丈夫です)を入れて、箔を振り落とします。
砂子を画面に平らに定着するように、膠水が乾かないうちに、上から紙で抑えて、優しくさっと擦りつけておきます。
薄美濃紙を使う方もいますが、別に新聞紙でも大丈夫です。心配な方は、コピー紙でもいいです。
このときの箔は、わざわざあかさなくても、切れ端が販売されています。「きりまわし」と呼ばれています。
箔押しの作業で出た切れ端は、瓶などに入れて保存しておけば、使えますね。
金箔を粉末にして、膠液で溶いたものを、金泥(きんでい)といいます。
これは筆で描くことができますが、箔を貼るより当然たくさん必要で、お値段が張ります。
5 まとめ
箔は、伝統的な表現方法で、魅力的ですが、難しく感じますが、やってみると面白いと思います。
効果的に箔を用いることができるといいですね。
楽しんで、自分の表現を突き詰めていきたいものです。
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