日本画初心者のことはじめ(3)岩絵具(いわえのぐ)の溶き方、塗り方

 

岩絵具は、日本画を他の絵の技法と一線を画するモノとする独特の絵の具ですね。

日本画の色合いというか、風合い質感にグッと来る方も多いと思います。

とはいえ、使い方にも、独特のモノがあるので、私なりにまとめてみました。

1 岩絵具の種類

岩絵具は、天然石(鉱石)※を細かくした顔料(不溶性の粉末)です。
群青(ぐんじょう)とか、緑青(りょくしょう)とか、沢山の種類があり、魅力的な色を発しています。
(※人工的に作られた、新岩絵具や合成岩絵具もあります)

同じ石でも、より細かく粉末化されると、石の持つ色合いが薄まります。
粒子が荒いと石本来の色合いが強まります。

この粒子の荒さを数字で表します。
数字が小さいほど、荒い粒子です。

一般に売られている商品では、8や9は粒子が大きく、きっぱりした色合いです。
13などは細粒化されていて、淡い感じです。
それより細かいと、数字でなく、白(びゃく)と呼ばれています。
また、この数字のことを、番手(ばんて)と言います。

番手は、製造元によって違いますので、いくつかの会社をまたいで描く場合は、確認が必要です。
ちなみに、上野のK店の場合は一般的なモノより数字が2段階大きく表記されているそうです。

2 膠(にかわ)で溶く

絵皿に置いた絵の具の上に、匙(さじ)膠(にかわ)をたらし、利き手の中指でこねます。
(人差し指を汚さずにおくと、
匙(さじ)の柄がつまみやすく、
また、人差し指を中指の上に重ねるとちょっと楽です。)

膠の量は、膠の濃さにもよりますが、10パーセントぐらいなら、絵の具と同じくらいの量(体積)でいいでしょう。

コネきれなかったら、膠を追加です。

ペースト状になったら、匙でを追加して薄めます。
膠液の2倍くらいでしょうか。

薄い膠液で溶くと、粒子に膠の成分がいきわたらず、接着力が落ちるのだと思います。

溶けたら、指についた絵の具を、絵皿の縁で、きっちり拭い(ぬぐい)取っておきます。
高価な絵の具なので、もったいない、もったいない^^;

3 まず、何を買いそろえるか?

最初に何を買うかは、描きたい絵の色調に沿って、
と言っても、いちいち画材店で小分けで購入というのは、大変です。
できれば、小瓶のセット(24〜48色)を購入し、必要に応じて買い足すというのが良いと思います。

追加は、小瓶に20グラムとか、袋に入れてもらうとか。

お店によっては、15グラムを、1両(りょう)という単位で販売されているところもあります。

私は、大まかに言って、白、11、9の3段階を中心に使っています。
岩絵具としては、11あたりから始めて、白(びゃく)を使ったり、上層部分は、9で仕上げていく感じです。

4 筆で描く際に

【選ぶ】
砂が乾いていると薄い色で、濡れると濃い色になりますね。
岩絵具も、水分を含むと濃く見えます。

塗りたい色は、乾いた状態で選びます。
透明な袋や瓶に入った岩絵具を、画面の前に持ってきて、見比べてもいいですね。

塗っている際には、濃く感じても、乾くとオッケー(^^)
とは、行かないことも結構あります(*_*)

【筆に含ませる】
絵皿の下の一部に何かを敷いて、少し傾げておきましょう。
すると、高い方に絵具が、低い方に膠水が、分かれます。
初めのうちは、中央から、絵具と膠水を筆に含ませます。

【画面に塗る、置く】
紙面に塗る際は、ゆっくりと置くようにして描きます。

筆についた絵の具が重みで下がる時間を使って、濃さを調節することもできます。

重ね塗りをする場合は、乾いてからでないと、塗った部分を剥ぎ取かねないので、ご注意を。

一旦水に浸けて、更に布で水分を軽く拭きとった状態の隈取筆(くまどりふで)や、平筆(ひらふで)などで、乾く前の岩絵具を優しくなでるように紙面に広げると、粒子が薄く広がって、いい感じのグラデーションができます。

テストピースなどの紙面で練習してみるといいですよ。

5 水干絵具(すいひえのぐ)と併用する

全て岩絵具で描くと、大量の絵の具が必要でお金が大変です(・・;)

現代日本画の大作などの表現では、岩絵具の下に水干絵具(すいひえのぐ)で、描いておくのがいいでしょう。

水干絵の具は、胡粉(ごふん)や白土を、染料で染めた絵の具です。

岩絵具とは違います。
比較的安価です。(10グラム200円ぐらい?)

粒子が細かく、マットな画面が作れます。

一旦、水干絵の具で描いておいて、薄めに岩絵具で風合いを出すような表現もアリです。

また、水干絵の具で、反対色などを工夫して描いた上で岩絵具を乗せて、効果を求めるものアリです。

岩絵具で一面に厚塗りを目指す場合にも、水干絵具の違う色でマットに塗り込めておくと、岩絵具の進捗度が分かりやすいですね。

6 注意点

【混色】
顔料なので、混色はなかなかうまくいきません。顕微鏡でみると、別々の粒子が混ざっているだけですから。
でも、混ぜる絵具の粒子が揃っていれば、それなりに混じって見えます。
絵皿で溶いて混色にしても、比重の違いで、皿の上で分かれ気味になったりします。

逆に、その特性を使って、面白い表現も可能とも言えます。

【朱】
朱(しゅ)という岩絵具は、膠との相性が良くないようで、膠液を少しずつ足していくと良いそうです。

また、銀箔(はく)アルミ箔との相性も悪く、変色しやすいので、合わせ技は避けたほうが良いそうです。

7 まとめ

岩絵具の保存については、膠の記事に書いておきましたので、参考にしてください。

岩絵具ならでは質感は、日本画として独自の味があり、思い通りになりにくいものの、偶然も含めてうまくいった際は嬉しいものです。

いろいろ挑戦して描いていきましょう♪