何に絵を描くのか?は自由ですから、いろいろ工夫してみればいいのです。
今回は、描く面に使われることの多い、和紙についての情報です。
1 何に絵を描くか?
そもそも何を持って日本画と言うのか、ですが、明治以前の国内で描かれた絵画。
明治以降は、(和紙などへ)岩絵具など日本の伝統的画材で描かれた絵画、とするのは、あまりにもザックリでしょうか?
【支持体として】
描く面のことを、支持体や基底材と呼ぶことがあります。
支持体は、和紙以外にも、絹本(けんぽん)や、板(天井画や板戸として)もありますね。
現代の日本画で、公募展などでは、木のパネルに張られた和紙に描かれることが多いです。
2 パネルに張られた状態
「張られた」は、「貼られた」わけではありません。
描く面の和紙はパネルに接着されてはいません。
パネルのサイドの面に、和紙の端っこを、糊(のり)で貼って、パネルの前面では、ピンと画面が張りつめられている状態です。
洋画の場合は、木のフレームにキャンバスが張られていますが、日本画の場合は、木のフレームに貼られたベニアのパネルに和紙が張られた、その面に描きます。ややこしい言い方で(-_-)
(サイド面まで描く場合は、パネルを和紙で包むように巻き、パネルの裏側に糊で接着させることになります。)
ですので、糊を剥がせば、紙ですから、巻いておくことも基本できます。
が、また展示することを考えると、そんな保存方法は、誰もしません。
3 日本画の和紙
販売されている和紙ですが、作られた地域や原料、製法、用法などによって、さまざまな商品があります。
工芸用の工夫を凝らされたモノもありますね。
パネルに張られることや、岩絵具などに耐えて長期間安定している和紙ということでは、厚さを含めて強度のあるものが求められます。
和紙は、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)、麻(あさ)と言った繊維の原料と、トロロアオイなどの粘液を使って漉(す)かれています。
私は、越前和紙の、雲肌麻紙(くもはだまし)を使っています。
「麻紙(まし)」は、麻と楮(こうぞ)などを原料として、大正期に越前の岩野平三郎(初代)が、一度絶えた技を復活させ、再び生産されるようになりました。
「雲肌」というのは、紙面に現れた繊維の表情を表していると思います。
竹内栖鳳(せいほう)や横山大観(たいかん)と言った画人らが、この和紙を好んで使い始めたことから、日本画の世界で越前和紙がよく使われるようになったそうです。
高知麻紙もありますね。
私が使った印象では、繊維質が強めで、水干絵具でしっかり着色するのを求められている気がします。
【ドーサ引き】
絵を描くので、にじみ止めをしてある商品を買いましょう。
「ドーサ引きがしてある」と書かれています。
ドーサ引きとは、明礬(みょうばん)を溶いた液が塗られていますヨ、ということです。
(みょうばんは、染色、防水、発色などの効果があるそうです)
ドーサ液を購入して、自分で引く(塗る)ことはできますが、結構な勢いで和紙に吸われてしまい、結局、引いたものを買っても値段的にそんなに差はありません。
4 和紙のパネルへの張り方
和紙を張るパネルの表面を、よく絞った雑巾で水拭きしておきます。汚れ、砥の粉(とのこ)などを落とすためです。
更に、白のアクリル絵の具(ジェッソ)の微粒子を塗っておきます。和紙が汚れないようにです。
和紙は、パネルの表面の左右、上下とも、その幅の長さと、サイドの厚さ(両端分なので長さ2倍で、4センチくらい)の合計より、少し大き目にカットします。
カッターナイフでも、ハサミでもオッケー
後で余りは切り落としますから、ザッとでも、
パネルのサイド面の裏面に近い方1センチ幅ぐらい、ザッと糊(のり)を塗っておきます。
乾かしてください。捨て糊(すてのり)と言います。
糊は、工作用の黄色のチューブや壺状の容器に入ったモノがいいと思います。
でんぷん糊ですが、小麦粉より、とうもろこしでんぷんの方が接着力がいいと感じています。
和紙の裏面に、水をたっぷり含ませた刷毛で、濡らします。※
和紙の中央部分に、パネルを裏返して置きます。
パネルごと、表面に返して、乾いた刷毛でシワを伸ばします。
中央から端へ、放射状に。
(※30号以上のパネルに貼る際は、パネルと和紙を一度にひっくり返すのは危険です。
大きい画面の場合は、パネルの表面を上にして、その上に和紙を上向けに置きます。刷毛で和紙の表に水分を行き渡らせます。シワにならないように、中央から端へ、放射状に刷毛を動かします。)
サイド面へ和紙を折っていきます。
その際に、捨て糊をした部分に再び糊を塗って、和紙を貼り付けます。
角の部分は、三角に折り出します。
和紙が乾くとピンと張って、オッケー
サイド面からはみ出した和紙を、カッターナイフで切り落とします。
角の三角は、どちらかのサイド(私は絵の上下サイド側)へ折って、軽く端を糊付けします。はみ出した部分をハサミで切っておきます。
なぜ、刷毛で濡らすのかは、水分を含ませると紙は膨張、拡大します。
その時、サイド面で糊付けすれば、和紙が乾いて収縮し(元の大きさに戻っ)た際に、ピンと緩みなく張った状態になるというわけです。
あまり時間をかけて作業していると、接着部分によって膨張収縮率に差が出て、角の部分に突っ張ったシワが出ることがあります。
手際の良い作業が求められます。
角にシワができても、制作している内に馴染むことがあるので、ひどくなければスルーしていいかと思います。
5 その他、まとめとして
【揉み紙(もみがみ)】
日本画のパネルに貼る際、紙を揉(も)んで、そのシワをマチエールとして利用する表現方法もあります。
【面ぷた】
箔を貼る際に、はみ出したくない部分に、薄美濃紙と膠水で、マスキングすることもあります。(めんぷたと言います)
【念紙(ねんし)】
トレース(転写)する際の転写紙を、念紙(ねんし)と言います。(カーボンペーパーやチャコペーパーもありますし、トレシングペーパーの裏面に濃い鉛筆で一面塗ったりもしますよね)
この念紙も、薄美濃紙と水干絵具、お酒などで、自作できます。
大きな紙で作っておくと、何度も使えて、必需品になります。
‥‥
歴史、製法、種類、用途、技法など、いろいろな面から興味の尽きない和紙の世界。
これからも絵だけでなく、生活の様々な面に活かされるといいなと、今回、感じることができました。
ではでは~
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